「李炯麒が芸能人を脅迫した」という誤情報がインターネット上に拡散された事件について

Twitterでのなりすましアカウント事件を発端とした、誤情報拡散とその対処について。

2-III、「2ちゃんねる」のレスの削除について

【前の記事:II、いわゆる「アンテナサイト」「まとめサイト紹介サイト」について】

  

【なりすましアカウントによる芸能人脅迫事件後のネット上での名誉毀損誤情報拡散について】その3

【はじめに】

超有名匿名ネット掲示板である「2ちゃんねる」には独自の「削除ガイドライン」というものが存在します。

そのガイドラインから外れた削除依頼に関しては、一切受け付けられません。

2ちゃんねる」にされたレス(書き込み)を削除するには、ボランティアである「レスの削除を行う権限」を持った「削除人」という人達に、「削除依頼板」という掲示板を通じて削除依頼を行う、という方法をとるしかありません。

 

2ちゃんねるのスレッドの名誉毀損誤情報拡散レスに、どう対処したか 】

私はそれまで2ちゃんねるを利用した経験がほとんどなく、2ちゃんねるへの削除依頼の経験もありませんでしたので、まずは削除要請板にある注意事項と削除ガイドラインを良く読み、削除依頼を出す事にしました。

 

削除依頼板の入り口に記載されていた「警察へ相談中 の方は重要削除対象の依頼先である削除要請板へ」という記載を元に、こちらのnews:ニュース速報[重要削除]に削除依頼を出しました。(レス番号333,335)

 

削除人からの回答は

 

「警察介入ありということで証拠保全の観点から削除判断は凍結。 

以降削除依頼は警察または司法機関関係者より 

責任者の押印がある書面での受付となります。 (レス番号334) 」

 

334で「証拠保全の観点から削除判断は凍結」と宣言された以上、 

334に書かれている「凍結」の解除要件を満たすまでは 

あなたがいくらその様に言われようとも 

削除人が勝手な対応をする訳にいきません。 (レス番号336)

 

 というものでした。

私は「警察または司法関係者より責任者の押印がある書面」が必要、という削除人からの回答を受け、地元の警察署へ、その「書面」を書いてもらえないかと再度相談に行きました。

 

対応していただいた生活安全課の警察官の方は、やはりインターネットや2ちゃんねるにあまり詳しくないと思われる方で、こういった相談に対処するには2ちゃんねるそのものに対する知識や、2ちゃんねるの削除依頼のシステムについての知識が、残念ながらまったく足りない感じでした。

 

警察の方には、削除要請のスレッドをプリントアウトした物を資料として提示し、

「このように警察関係者からの書面があれば受け付けると言っている。以前この件で警察への相談を行い、名誉毀損誤情報拡散ページの削除について協力いただけるという事で相談に来た。2ちゃんねる側がこのように言って来ているという事は、警察からはこういった方法をとることが可能なのではないのかと思う。可能であれば是非お願いしたい。」

というような内容を伝えたと記憶しています。

 

 

 警察の方からは

  • 「警察からそういった事をしたという例は聞いた事がない」
  • 「現状では法的強制力がある働きかけは出来ない」
  • 「書面といっても、送付先も受付先もわからない」
  • 2ちゃんねるは警察からの働きかけに対しては何の反応も示さない事が殆どである」
  • 2ちゃんねるに対して、警察から削除依頼を出すことは可能だが、それによって削除が受け入れられた例というのを聞いた事がない」
  • 2ちゃんねるの人権侵害書き込みに対しては、警察からよりもとある人権に関する団体の方が実績があり、そちらから削除依頼を出してもらうほうが良いと思う その団体については今手元に資料がなく、調べて後日お伝えする」

という内容の回答をいただき、何とかお願いして警察の方からも2ちゃんねるに対して、書面ではないまでも、掲示板を通じて削除依頼を出してもらう約束をして、その日は相談を終えました。

 

後日、再度警察に相談に行った際に、生活安全課の担当者の方から「警察よりも2ちゃんねる関係の問題に詳しく、影響力が大きい」とされる「法務局人権擁護委員」への相談を勧められました。

※参考ページ:ネット人権侵害の相談、過去最多 法務省統計

      政府広報オンライン インターネットによる人権侵害に注意!

 

また、警察から2ちゃんねるに対する削除依頼を出した、との事でした。

ただ、いくら探しても警察から2ちゃんねるに対して出された削除依頼は見つかりませんでした。

後日、削除依頼先のURLだけでも教えてもらえないかと担当の方にお願いをしにいきましたが、警察から出したとされる2ちゃんねるへの削除依頼の内容、場所などの詳細は何一つ教えられない、との事でした。

 

法務局人権擁護委員会への相談も行いましたが、

  • 「1以外のレスに関しては、過去ログ倉庫に格納されているため、確認することが出来ない。閲覧する設備もないため対処は難しい。」
  • 「警察からも削除依頼の結果、削除人の反応等を待って欲しい。(警察から削除依頼の場所と内容がわからないので結果の待ちようが無い、警察担当者と連絡を取ってみて欲しい、とお願いに対して)こちらから警察と連絡を取り合うことは出来ない」
  • 「レス内容が法的に問題があるのか、判断することが出来ない。削除人の返答どおり弁護士に相談してはどうか。」

というような返答しか得られず、残念ながら削除依頼を出してもらうことすら出来ませんでした。

 

その後、2ちゃんねるの「過去ログ専用削除依頼スレッド」に何度か削除依頼の書き込みを行い(こちらレス番号269レス番号379)ましたが、私からの削除依頼が受け入れられることはありませんでした。

 

私は2ちゃんねるに対しては、自分だけの力ではどうする事も出来ないと判断し、あとは弁護士等の司法関係者の手に委ねる事に決めました。

 

Twitter

2ちゃんねるのレスに関しては、以後、弁護士さんにお願いしようと思う」

とツイートしたところ、今回の被害の一部始終を見て知っていてくれて、心配してくれていたフォロワーの方達や、協力者の方達が、弁護士さんを紹介してくださったり、弁護士費用の援助まで申し出てくれました。

 

私は、協力者の方達に紹介していただいた弁護士さんに電話での相談をしたり、地元の法テラスを通じて弁護士さんに相談をしたり、インターネット上で「誹謗中傷、名誉毀損等の権利侵害ウェブサイトの削除」を得意分野として掲げている法律事務所などに相談と見積り依頼をしたりして、「司法の力によって、2ちゃんねるの名誉毀損レスを削除する方法」について模索しました。

 

その結果、今回の件への対処として最適と思われる弁護士さんに2ちゃんねるの名誉毀損レス削除を依頼することになりました。

(2ちゃんねるの名誉毀損レスを裁判所の命令によって削除する流れについては、また別の機会に書こうと思います。)

 

また、弁護士費用については、資金援助を申し出てくれた方から「カンパ」という形で募ることにしました。

 

カンパがどのように行われたか等、この時のカンパについてはこちらに詳しく書かせていただきました。

 

Twitterでのフォロワーという関係上、実際に面識がある方がほとんどいないにもかかわらず、10万円以上ものお金が、カンパ受付開始から数日で集まるという大変喜ばしい結果になりました。

 

カンパしていただいた弁護士費用を元に、6月14日に弁護士さんへ正式に依頼をする事が出来ました。

 

その後、弁護士さんとの打ち合わせを繰り返し、2ちゃんねるのスレッドの名誉毀損誤情報レスの削除のための、東京地方裁判所へ提出する「仮処分申立書」が完成しました。

 

東京地方裁判所に「仮処分申立書」を提出した結果、2ちゃんねるのスレッド内のレス1と47が「名誉毀損にあたる」との決定が下され、当該レスに対する削除の「仮処分決定」が出されました。 

 

それを元に、弁護士さんの手で2ちゃんねるにスレッドが立てられ、「仮処分決定書」の正本を提示した形での削除依頼が行われ、その後すぐに当該レスの削除が行われました。

※参考

【東京地裁の仮処分決定をもとに立てられた削除依頼のスレッド】

【当該レスが削除された2ちゃんねるのスレッド】

 【仮処分決定書(正本)のスキャン画像】 (1) (2) (3) (4)

 

事件が起きたのが4月19日、2ちゃんねるのレスが削除されたのは7月4日の事でした。

 

これで私に対するインターネット上の名誉毀損誤情報を発信するページは、すべて無くなる筈でしたが、なかなかそううまくは行きませんでした…。

 

(※2013/9/2追記 2013年9月1日に、ネット上に最後に残った誤情報拡散ページが削除され、ネット上からは上記の情報は完全に削除されました。ありがとうございました!)

 

  

【続きの記事:IV、現在も唯一残された、名誉毀損誤情報拡散ページついて】